牧師コラム

牧師コラム · 2024/04/21
 明日22日から29日までは聖書の暦の上では「過越の祭」です。イスラエルでは聖書が定めた通りに今日もお祝いをします。さて聖書には、古代ヘブライ人たちはエジプトで400年間奴隷となり苦しめられたこと。神がモーセを立て、彼らをパロの支配から解放し、紅海を渡らせ向こう岸へと導いたことが記されております。教会時代に入り、キリストの弟子となったパウロは、これらの経験はキリスト者にとって「バプテスマのひな型」だと説明しました。
牧師コラム · 2024/04/14
 息子に誘われてアカデミー賞受賞映画「オッペンハイマー」を観ました。大量殺戮兵器(原爆)の開発ドラマです。20世紀の知性の結集は偉業なのか。それとも–––。◻️1945年7月16日、午前5時30分、「4、3、2、1、ゼロ!」 巨大な火の玉と雲。静寂、熱風そして雷鳴。ニューメキシコ州のトリニティ・サイトで世界初の核実験が行われました。映画は、評判通りの映像でした。しかし放射線被害の様子は意図的な省略でした。この映画を通して議論してほしいと監督はインタビューで語ります。ですが開発国の視座で表現し、「原爆が必要悪か絶対悪か」の判断を観衆に委ねようというのはフェアではありません。
牧師コラム · 2024/04/07
 4月から始まったNHKの朝ドラ「虎に翼」のテーマに関心を寄せています。日本で女性初の弁護士になる猪爪寅子(トラコ)を演じる伊藤沙莉さんは私が好きな女優さん。それも関心の一因だが、この国で男女平等を切り開くというテーマに惹かれました。私は、皆様の牧師になる以前、海外から帰国後の一年間は、新潟県庁の男女平等・共同参画課(前「女性政策課」)の非常勤職員として働いておりました。これも一因です。
牧師コラム · 2024/03/31
イエス・キリストは死んで蘇りました。このお方の死は真死であって仮死ではありません。主のよみがえりは蘇生ではありません。復活です。蘇生者はやがて必ず死ぬべき道をたどるからです。さて「イエスの空虚な墓」は人類最大のミステリーですが「ここにはもうおられません」(マルコの福音書16章6節)。主は確かに死んで黄泉に下り、復活して生きておられます。◻️「十字架刑」はローマ式の死刑で、最もおぞましい執行方法の一つでした。受刑者にゆっくりと死を味わせ、最後は自分の体の重みで肺をつぶさせ窒息させる刑です。主がゴルゴダの丘の上でこの刑にかかると、正午から午後3時にかけて太陽は姿を消し、暗闇が現れました。イエスを殺せと叫んだ群衆は黙り、一方の主はこの闇の中で祈り、父なる神に真のさばきを委ね、息を引き取りました。この様子を主の真下で見ていた百人隊長は「この方は本当に神の子であった」と証言し(同書15章39節)、ユダヤ教の最高議会の議員アリマタヤのヨセフは、死罪を訴える側からイエスを救う側に転身しました。
牧師コラム · 2024/03/24
 聖書は、食卓を囲む光景を特別な機会として描きます。一つは家族を家族たらしめる機会として、もう一つは友好関係の機会としてです。前者の顔ぶれは聖書時代の家族であれば、血縁者たちに加え、召使い(奴隷)や寄留の他国人(客人)が居ます。後者は、以前争っていた者同士が和解して食卓を囲む人たちです。どちらも、食卓を囲み、同じものを分かち合う事を通し、関係を深めたり回復させたりしました。食事は空腹を満たすだけの時間ではない様です。今日、世に広まる「孤食」は、聖書から離れた新しい光景ですね。
牧師コラム · 2024/03/17
 先日、妻が「ねぇ私の待ち受け、今はコレなの」と言い、スマホ画面の「娘のひらいた手」を私の顔の前にひょいと差し出しました。撮影したのは私でした。産科病棟の個室で、看護師を退室させた私はケータイを取り出し娘を撮影したのでした。あの日、妻は白い顔で寝ていました。そして娘も寝ている様でした。が空間には生きることと死ぬこととがつながり混じり合っていました。撮影の日は3月10日。もう来ないだろうと思っていたこの日のフラッシュバックを静かに受けとめ、私は今年の受難節を過ごしています。
牧師コラム · 2024/03/10
 世界のイスラム教徒19億人は、今日からひと月の間、断食を実施します。彼らの魂のアンテナが「真の救い主」へ向かうように、私たち教会では執りなしたいと思います。◻️イスラム教徒は毎年「イスラム暦(太陰暦)」の9月をラマダン月と呼び聖なる月とします。彼らの教祖ムハンマドがこの月に神(アッラー)から啓示を受けたからです。この月を神様に感謝するために断食をします。日出から日没まで、太陽が昇っている時間は飲食をしない。一滴の水も飲まないようです。
牧師コラム · 2024/03/03
著書「その時の祈り」(辻宣道 著 日本基督教団出版局)の中の、レント(受難節)に捧げた祈りをご紹介します。声に出して共に祈りましょう。 ーーーーーーーーー キリストをこの世につかわされた主よ 御子イエスの苦しみをしのびつつ過ごす レントに入りました。◻️御子はわたしたちの罪のために「神と等しくあることを固守すべきこととは思わず」「しもべのかたちをとり、人間の姿に」なられました。◻️そして罪ある者と共に過ごし、罪ある者のために十字架にかかり、死をもって父なる神にとりなしてくださいました。
牧師コラム · 2024/02/25
 能登半島沖地震の新潟市の被災届けは全体の8割はここ西区です、と被災相談窓口の方から知らされました。先週、ここで教会牧師館の「り災証明書」を発行していただきました。被災レベルは半壊より一つ上の「中規模半壊」––構造上耐震性に不安は残り、ここに住むか離れるかの判断は居住者に委ねられます。さてどうしたらよいものか。確かに玄関側の南の壁は縦横に亀裂が入り、西側の大窓はどこも歪んでいる。お隣り交流館との段差はコンクリート壁で仕切り、土圧を支えていたのだが、亀裂が縦に走り、今後も支えてくれるかは分からない。
牧師コラム · 2024/02/18
 「モンスター選挙年、世界人口の半数が投票」––先月28日の朝日新聞「総合欄」の見出しです。記事の内容に驚きました。2024年に入り、すでにこれらの国々で国政選挙を行い為政者を選出しました。バングラデシュ、台湾、エルサルバトル、アゼルバイジャン、パキスタン、フィンランド、インドネシア。そして来る3月はロシア、4-5月はインド、6月はメキシコと欧州議会選挙、そして11月は米国が続きます。この一年で世界は「選挙の数」よりも「政治の質」が問われると注目されています。人道的に培ってきた法の支配が「人の支配」へ進んでいかないように、私たち教会も注意を払っておかねばなりません。

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